2012年12月25日火曜日

排卵誘発剤の開発

その後排卵誘発剤の開発によって、多胎妊娠が頻発したので一九六〇年代後半から一九七〇年代、不妊治療のことはあまり話題にのぼらなかった。通常なら、排卵時に左右どちらかの卵巣から一個の卵胞が成熟して一個の卵を放出するのだが、排卵誘発剤を使うと、人工的に数個から十数個の卵胞を成熟させることができる。そのため人工授精をした場合、卵子の数の多さによって妊娠のチャンスがふえることになる。実際この不妊治療により、五ッ子ちゃんとか六ッ子ちゃんなどの誕生があった。

一九七八年の体外受精によるルイーズちゃんの誕生は、衝撃的であった。新聞には「試験管ベビーの誕生」と書いてあったと思う。この瞬間、私は試験官の中で精子と卵子が振りまぜられ、それが科学技術の力によって受精し、1ヵ月後には、そこからオギャアと赤ちゃんが生まれ出るような錯覚を抱いたものであった。

体外受精というのは排卵誘発剤によって成長した多数の卵ドを採卵して、それを、「栄養液の入った清浄な無菌皿に置き、射精したばかりの精子と混ぜ合わされる。この皿にふたをして、ふつうの体温に合わせてセットした培養器に入れ受精を待ち、一、二日ガラス容器内で培養して、これを女性のドー内に移すものである。日本で体外受精による赤ちゃんが生まれたのは、一九八三年、東北大学においてである。

さて子宮に移す際には、試験管内で受精した卵を三、四個移し、その他残りの受精卵を摂氏零下一九六度の液体窒素で凍結して保存する。これが凍結受精卵で、一九八九年のクリスマスに誕生し九日本初の女児双子の凍結受精卵児は、先に保存した受精卵四個のうち、解凍して正常に分裂した二個を子宮に戻し、二個が着床したものである。最近の不妊治療では、ギフト法(配偶乙ナ卵管内移殖法)と呼ばれる体外受精の改良型が開発されている。これは取り出した卵子を精子と一緒にして、受精を待たずに女性の卵管へ戻す方法で、この方法では女性の、「左右どちらかの卵管が通じていなければならないが、採卵当日に卵管に戻すので培養時間が短く、成功率は高いと言われている」(『朝日新聞』一九九一年三月二七日)そうだ。

これは、Y子さん前節が最後に受けそこね、「もう不妊治療ばかりに翻弄される人生はやめた!」と決心させた、あの方法である。この他、男性不妊に対する研究も徐々に進められつつあるが、こうしてみていくと、人の誕生って何だったのだろうと考えてしまう。これまで何よりも、情緒的な愛やいたわりや、心と身体のふれ合いが、誕生には不可欠だった。それなのにいま、不妊治療で行なわれる生命の創造は、非常なハイテクの管理下で、多量の薬物と高度な先端医療技術を使い、人間的ぬくもりをむしろ排除した冷たい器機類に囲まれて行なわれている。さらに。人間製造の袋のごとく化した不妊女性の身体に対して加えられる技術の介入は、これでもかこれでもかと、天井を知らない。


2012年9月3日月曜日

絶望にいきつく道

絶望にいきつく道では悲哀からさらに力つきて最後にいたる道がもっともなだらかな道だろうが、これと別に自分のあるく道が先方からふさがれて、世界とのつながりが断たれてしまうこともある。自分は生きたいのだが、まわりが生かしてはくれないといった場面におかれれば、私どもはいやおうなしに絶望させられてしまう。戦場で敵軍の重囲におちいり、脱出ののぞみなく、そうかといって降伏もゆるされぬような極限の状況、あるいは逃走中の重犯罪者が、自分のすぐそばまで逮捕の網が近づいてきたのを察したときなどがそれだということは説明するまでもない。

だれにもそれとすぐ納得のいくこうした絶望のほかに、まだ絶望の道かおる。それはごくありきたりのものではないかもしれないか、それだけに人間存在の深淵にまでとどいているような。世界と自我のつながりの根源から発するような絶望である。それには説明よりもその人自身のことばをかりてつたえた方がずっと実感的にわかるにちがいない。その人たちはこんな風にいう。

「あなた方はもう一度人間界と手をつなげとおっしゃるが、どうしたらつなげるかかわかりません。まわりと自分の間にガラスの壁みたいなものかあって、壁でスッポリつつまれているような感じです。厚いガラスの壁。私もでぎればいろいろなことをしたいのです。みんなとつきあう方がよいのだとわかつています。人間界にI緒にすむあたたかさがなければいけないのだと知っています。だけどどうすればよいのでしょう。私には『できない』のです。まおりに接触できない。隔絶されてしまったのです」。

彼は自分の前にひろがっている世界に向って手をさしのべようとする。手の指は机にふれ、壁にふれ、人にふれる。けれどもそれはふれた感覚だけで、感覚の背後に実体のある世界が実在するのだとい5ことが感じられない。眼には映っているけれども、それは映画のスクリーンにうつった景色同然、ただ眼にみえているだけで実体かない。

実在的世界と自分の間には見えない壁がたもふさがっていて、その向うにはいっていけない。(そういえばガラス窓というものは、私と向う側の世界との問を仕切るものである。すどおしのガラスとはいっても、しめた窓をとおしてながめられた外側の世界は一種の「根のなさ」「非現実性」にうきあがっている)。

2012年8月1日水曜日

ルーズベルトとニューディール

著名な民主党の大統領フランクリン・ルーズベルトは、一九二九年の経済恐慌をきっかけに国民の間に高まった共和党政権批判を背景にして、三三年に大統領に就任した。当然その一連の政策は、厳しい企業規制が中心となった。経済恐慌を引き起こしたのは、利益にのみこだわったアメリカの私企業の活動が原因であったとされたからである。

ルーズベルトの一連の政策をニューディールと称するが、この総称のもとで、企業規制のためのさまざまな政府機関が設立された。崩壊した株式市場の規制のためには証券取引委員会(SEC)ができたし、国民の重要な通信手段である放送事業を管理するためには連邦通信委員会(FCC)が、海運業の監督のためには合衆国海事委員会(USMC)が設立されるといった具合に、経済活動の多くの側面に政府の規制の手がおよぶことになった。

このような行政委員会がワシントンにあふれただけではなく、すべての委員会は英語の頭文字だけからなる略称で呼ばれたから、「ニューディールとはアルファベットスープである」などといわれたのもこのころである。

当時もいまも、企業の経営者などを主な読者とするアメリカのビジネス雑誌「フォーチュン」誌は、その当時の新しいアメリカの状況を指して、リンカーンの言葉をもじりながら次のように嘆いた。

政府がみずから企業の自由な活動を禁止するようになったこの国は、すっかり変わりはててしまった。これはもはや国民のための政府などではない。これは委員会による委員会のための委員会に属する政府だ。
ルーズベルトは行政委員会の設立のほかにも、勤労者の保護のための立法措置を講じたり、国家による農作物の買い上げ制度を実施して、農民の保護にあたった。あるいは、基幹的な産業を国家の強い規制のもとにおいただけではなく、連邦政府もみずから生産活動にのり出している。

テネシー渓谷公団がその最も代表的な例だが、政府はダムを建設して電力をつくっただけではなく、その電力を利用して肥料生産にまで手を出した。そうしてテネシー渓谷一帯の貧しい農民を救済しようとした。

2012年7月18日水曜日

償いと更正の間。厳罰化で増える無期囚。

短く刈り込んだ白い髪。作業着姿の男性(64)が桐(きり)だんすを組み立てる手には、深いしわが刻まれている。

この手で、行きずりの女性の首を絞めた。現金を奪い、偽名で身を潜めたが、全国に指名手配され捕まった。強盗殺人罪で無期懲役。高いコンクリート塀に囲まれ生きて29年がたつ。

「はっきり言って、ここでは死にたくないですよ」。濃尾平野の北端に建つ岐阜刑務所。面会した記者に話す男性の声は、早口で震えた。「だけど、娑婆(しゃば)で仕事したいと思う心は、体力が衰えた55歳で止まりました」。家族はなく、体も追いつかず、1人で生活する自信を失ったという。

厳罰化を背景に、受刑者の収容期間は長期化し、特に無期囚の仮釈放は難しい。05年の刑法改正で、有期刑の上限が20年から30年に延びた。無期刑の自分が、30年以内に仮釈放される可能性は消えたと思っている。

刑務作業を繰り返す日常。作業のない休日は写経をして過ごす。「何も考えないで済ましとくんですよ。うん、考えたって、しょうがねえんだもん」。自分に言い聞かす。「ここで朽ち果てるしか、ないんですよ」。

岐阜刑務所は、殺人などの重大事件で服役2度目以上の受刑者が主に入る施設。3月末現在で、受刑者987人のうち21~83歳の無期受刑者が176人を占める。

「そりゃあ、出たいと思うことはありますよ。けど、わがままだと自分に言い聞かせてます」。別の無期刑の男性(48)は、強盗致死罪で服役12年目。仮釈放は想像もできない。

強盗事件で別の刑務所を出て1カ月もしないうちに、再び金目当てで民家に押し入り、殺すつもりはなかったが相手の命を奪ってしまった。生きていることがつらくなり、富士山のふもとの樹海をさまよった。大量の精神安定剤を飲んだが、死ねなかった。首をくくる踏ん切りがつかず、懸命に樹海からはい出した。

今、灰色の塀の中から外につながる道は、さらに険しい。「60代で入ってくる人がいっぱいいる。何人が生きて社会に出られるか。そういう(仮釈放の)話には触れないようにしている」。

けんかでもして懲罰を受ければ、仮釈放は一層遠ざかる。「波風立てず、慎重に、慎重に暮らすんです」。会話が許される休憩時間も、気の合う受刑者同士がひっそりと集まる。

32年間を岐阜刑務所で過ごした男性が4月、職員に頭を下げ、門を出て行った。ここでは7年ぶりの無期受刑者の仮釈放だった。

長期の受刑者は精神が不安定になる。睡眠剤の服用が増え、体を壊す。家族に縁を切られ、面会のない人間も多い。そんな中で、少しでも希望を持たせることが大事だと、玉田一博刑務官(49)は感じている。

1人の仮釈放で、所内の「空気」が一変したという皮膚感覚がある。普段口をきかない受刑者が話しかけてきた。「どんな人間でも、出たいと思っている。光が見えて良かったです」。30年近く現場にいる刑務官が、少し表情を緩めた。

2012年7月17日火曜日

流行りつつある新しいショッピングスタイル

学生や主婦層までネットショッピングを利用するようになり久しいが、2 0代-3 0代の情報感度の高いビジネスパーソンの間ではもはや、ただ単にネットで商品を購入するだけでなく、ポイントサイトなどを経由してオトクにショッピングを楽しむ人が増えてきているという。

ポイントサイトとは、そのサイトを経由して回答したアンケートや、ショッピングなどがポイントとしてユーザーに還元されるサイトを指す。貯まったポイントは、商品や現金と交換することもできるという魅力がある。現在かなり多くのポイントサイトが開設されているのだが、中でも老舗ライフマイルは国内会員数が460万人と抜群の人気を誇っているようだ。

老舗らしく提携している。ここでショッピングをすると換金可能なポイントを得られるわけだが、例えば楽天で買い物をすると、楽天、Yahoo!ショッピング、セブンネットショッピングといった定番サイトからニッセン、ビックカメラ、iTunesなどの専門サイトまで軒を連ねているサイトは多彩で、楽天から100円につき1円分のポイントと、ライフマイル経由での1円分のポイントを二重で得ることができるのだ。

また、ゲームやショッピングだけでなく証券・外為・FX・先物といった金融サービスを始める際に、ポイントサイトを経由することで最大10,00円分のポイントがつく案件もあるという。

また、ライフマイルがユニークなのは、ここでショッピングをしたり金融サービスを受けたりすればするほど特典を得ることができるようになっている所だ。利用頻度に応じてブロンズ、シルバー、ゴールドなどユーザーステータスが上がり、より高い特典を得やすくなっている。例えば最高位のプラチナ会員になるのだが、これは業界最高水準だという。

もちろん、ヘビーユーザーにならなくとも、広告を見たりゲームで遊ぶだけでも十分にポイントを貯めることもできるから、忙しいビジネスパーソンにとってはもってこいなのかもしれない。ちなみにOECD(経済協力開発機構)の調査によれば、日本は世界で2番目に労働時間が長い国らしい。確かに、仕事帰りにショッピングができる人は意外と少ない。そんな環境もあってか日本のネットショッピングの市場規模は拡大の一途で2010年で7.8兆円規模にまで成長すると言われている。

将来、ネットショッピングがより広まっていくのであれば、こういったポイントサイトを上手く利用することで自分のライフスタイルに合った、オトクでスマートなマネーライフを送ることができるのではないだろうか。

2012年7月12日木曜日

日銀、大蔵省の政策が景気回復を停滞させている。

バブルへの対応について、日銀も大蔵省も、致命的な失敗をしました。日銀の利上げも財務当局の「総量規制」も、景気が上り坂のときに発動して、好景気が長くゆるやかに続くよう誘導すべきなのにタイミングを遅らせ、始まった崩壊を深刻化させる方向に舵を切ったからです。「日銀、大蔵省という経済政策の両エンジンが、ともに逆噴射したのだから、日本経済が墜落したのは、当然の結果だった。」と著者は書いています。日本の経済は、この墜落以来、一度も本格的には回復することなく今に至っているのです。

しかし当時はバブルを潰すのが正しいことと宣伝され、株価を支えようとした宮沢首相の政策は不評で政治は混迷し、細川連立内閣が誕生しました。細川内閣の「政治改革」のかげで進んだのが大蔵省主導の「財政改革」でした。これは唐突な「福祉税という名の消費税引き上げ」提案となって挫折するのですが、この後、財務当局の「歳出削減・国民負担増路線」が日本経済の重石となって行きます。

バブル崩壊は、株価・地価の下落に止まらず、金融機関の相次ぐ破綻となって長く尾を引きました。著者の見地からすると、これはバブル是正の不徹底ではなく、行き過ぎた崩壊に起因する当然の成り行きなのでした。正常な経済回復政策なしに不良債権処理を先行させれば、不良債権は逆に、連鎖的に増加することになります。

こうしてバブル崩壊から10年たっても景気が回復しない異常な時代となりました。著者の言葉を借りれば「資産が減って嬉しい人はいない。気持ちは暗くなるし、将来は不安だし、物を買う気がしなくなる」デフレ時代の到来です。村山内閣のときにも小渕内閣のときにも、経済回復のきざしは何度かありましたが、いずれもあと一歩のところで本格化には至りませんでした。「日本の政策当局は、金利を上げたがり、大蔵省は、財政健全化を急ぎすぎる。」と著者は書いています。

閉塞状態になった日本の経済社会は、なんとか打開してくれる救世主を待望するムードを醸成していました。そこでは、いくつかのスローガンが呪文のように繰り返されました。「郵政民営化は改革の本丸」「金融ビッグバン」などなど。これらの内容を、国民はどこまで理解していたでしょうか。それらはグローバル・スタンダードに遅れないためであるとも説明されました。しかし、それを待望し最大の利益をあげるのが誰であるかは、まだ一般には知られていませんでした。

2012年6月15日金曜日

過去最大に迫る日経商品指数の下落率

主要商品の取引価格で構成する日経商品指数(1970年平均=100)が急落している。国内景気と相関性の高い前年比騰落率は17種の昨年末値がマイナス25.1%と、アジア通貨危機に国内金融危機が追い打ちをかけた98―99年時の下落率も超えた。今後、鋼材などの値下がりは指数下落を加速する可能性がある。第1次石油危機後に記録した過去最大の下落率(29.4%)さえ上回りそうな気配だ。

月末値ベースで見た17種の前年同月比騰落率は2002年の景気拡大からプラス(前年より上昇)を維持。軽い後退局面入りとの観測さえ出た2回目の「踊り場」でも05年5月のプラス1.3%で踏みとどまった。しかし今回は米リーマン・ブラザースの経営破綻をきっかけに金融危機が実体経済に波及。8月末のプラス21.5%から急落が止まらず、10月末値で42種とともにマイナス(前年より下落)に転じた。

日経商品指数から景気動向を読む場合に水準は関係なく、勢い(騰落率)の変化を見る。内閣府が景気動向指数の先行指標に採用している42種も騰落率の変化で改善、悪化を判断する。17種の過去の推移を見るとアジア通貨危機に山一証券や北海道拓殖銀行の経営破綻が重なり、97年10月から99年いっぱい続いたマイナス局面で、下落率は99年1月に16.8%、42種も13.5%に達している。ただマイナス幅が縮小しても景況感は改善するため、この時は99年1月が底になり、IT(情報技術)バブル崩壊前の2000年1―2月には17種も水面上に顔を出した。

ところが今回の下降局面でまだ底は見えない。17種の昨年末値の前年同期比下落率(25.4%)は、プラザ合意後の円高不況に原油価格が1バレル10ドル以下に急落した局面の86年7月末値(マイナス27.6%)に迫る。第2次石油危機後の下落はピークの81年2月でもマイナス20.5%とそれほど深くなく、86年水準を超えると第1次石油危機の反動で急落した74年12月末値のマイナス29.4%が視野に入る。プラス20%を超す高水準からわずか4カ月でマイナス20%超へという変化の大きさといい、米国の住宅・証券化バブルの崩壊が招いた実体経済への影響が既に驚異的な大きさであることが日経商品指数の動きでも分かる。

昨年は原油価格が1月に初めて1バレル100ドルを突破してから7月の147ドル台まで急騰を続け、17種も7月の185台まで上昇した。原油や穀物価格が現状で下げ止まったとしても、日経商品指数は昨年前半との比較で夏まで下落率の拡大が続く公算が大きい。しかも自動車や家電向けの需要減少とアジア、中東の大型設備稼働が重なる石油化学製品や、これまでの原料高で高止まりしていた鋼板が鉄鉱石の値下がりとともに今後下落する可能性は高い。

主要商品の値下がりは消費者物価の落ち着きや企業コストの軽減につながる半面、景気変化を半年ほど先読みする商品市況のベクトルは下落率が縮小するまで上向かない。日本経済は7―9月期までマイナス成長が続くと予想する三菱UFJ証券の水野和夫チーフエコノミストは「02年から輸出依存度を高めてしまった結果、海外変調に伴う量の減少と円高のダブルパンチが厳しい」と指摘する。個別商品ごとの振れはあったとしても、やはり商品価格は指数でならして見れば景気や経済構造の変化を如実に物語る。

2012年6月13日水曜日

仮釈放者を支援、北九州に初の国営施設。

刑務所から仮釈放された人の社会復帰を支援する初の国営入所施設「自立更生促進センター」が29日、北九州市に開所した。民間の更生保護施設で受け入れが追いつかない現状を打開する狙いがあるが、地元には入所者の再犯を懸念する声も残る。
各地の国営施設の建設計画も反対に遭っている中でのスタートとなり、乗り越えるべき課題は多い。

◆14人入所可能

運送会社の倉庫が並ぶ同市小倉北区の湾岸地域。センターは国の合同庁舎を改装し、14人が滞在できる居室や食堂などを整備した。来月以降に入所する仮釈放者は3か月をめどに、ここを拠点に就職活動を行うほか、社会生活を営むうえで必要なルールや知識について、常駐する保護観察官から指導を受ける。

この日の開所式には、地元の自治会長や保護司ら約40人が出席した。
当初、仮釈放者を受け入れる国営の入所施設は、福岡、京都、福島の3市で開設が予定されていたが、いずれも住民の反対で難航。住宅密集地でないこの場所が選ばれた。「罪を犯した人がやり直すことは大切。国がきちんと監督するなら、あってもいい施設じゃないか」。センターの近くに住む男性(68)は理解を示す。
しかし、周辺にある企業や社宅の住民には不安の声も。法務省はセンターの周りに防犯灯を増設したり、警察にパトロールの強化を要請したりしているが、近所の女性会社員(34)は「再犯がない保証はなく、入所者が子供と接触しないかどうか心配」と話す。今年4月、同省には開所に反対する1万4300人分の署名が提出された。

◆再犯率

仮釈放者は残りの刑期を保護司や保護観察官の定期的な指導を受けながら過ごす。釈放後5年以内に再び犯罪を起こして刑務所に逆戻りする人の割合は、刑期満了まで服役する満期釈放者の59%に対し、仮釈放者は36%にとどまっている。
仮釈放が認められるのは、身元引受先があることが条件となっており、従来、引受先が見つからない人の受け入れは、民間の更生保護施設が担ってきた。だが、全国102か所の民間施設だけでは収容しきれないうえ、更生の意欲があっても性犯罪や薬物犯罪などを犯した人については、近隣住民の抵抗感が強いという現状があった。民間施設では対応が難しい仮釈放者も対象に含めた受け皿作りが、国の急務となっていた。

◆行動把握

初の国営施設に対する民間施設の期待は大きく、埼玉県にある更生保護施設「清心寮」の藤本信次施設長(75)は、「民間施設では住民を不安にさせないために、軽微な罪の人を中心に受け入れてきた」と語り、「国は専門的対応が必要な人の更生に力を入れてほしい」と望む。
センターでは、暴力の衝動を自分で抑えるプログラムなど個々の問題に応じたメニューを準備し、入所者にはGPS(全地球測位システム)付きの携帯電話を持たせて、行動を把握する。ただ、同省幹部は「軌道に乗るまでは性犯罪などを犯した人の受け入れは控える」としており、国営施設の役割を十分果たせるかどうか、課題も残っている。

2012年5月20日日曜日

弱気に傾きすぎた商品市場

米国発の金融危機が昨秋に世界を駆け巡ってからは、内外の商品市場では値下がりや減産の話ばかりが目立つ。石油輸出国機構(OPEC)の大幅減産をはじめ、素材から自動車やエレクトロニクス関連の最終製品まで軒並み減産ラッシュとなっている。
 
昨年末の米国のクリスマス商戦がすこぶる振るわなかっただけに、日本を代表する輸出産業の販売低迷と業績の下方修正もうなずける。東アジアから米国に向かう外航コンテナ船が運ぶ貨物量はクリスマス商戦を控えた10月ごろが最も多くなる。だが昨年10月の輸送実績は、リーマンショック前で、どちらかといえば閑散期の8月実績より4.5%少ない。

まだ12月までの数字が出ていないが、昨年の月間輸送量のピークが8月だったのはほぼ確実だ。ベテランの海運業界関係者も目を丸くするような珍事となった。

内需型商品に目を向けてみても、セメントは昨年4月に10%の値上げが実現したはずだったが、大手メーカーのなかには販売不振を背景に2009年3月期が7期ぶり最終赤字の見通しもある。まさに未曽有(みぞう)の事態なのだろう。

こうした事例を挙げていくと、今年の内外の商品価格の動向にも悲観的な見方もしてみたくなる。ただ足元の商品価格には実際の需要と供給のバランス以上に下げているものもある。

昨夏の原油相場1バレル147ドルの最高値を付けたころに投資ファンド関係者が「この相場は実際の需給や先行きの需要を反映したもの」と強弁した。これが今なお正しい認識だとみる関係者はほとんどいないだろう。

逆に今の商品価格が需要と供給の現状や先行きなどファンダメンタルズ(基礎的条件)を無視する形で過度に売り込まれているものも多いようにみえる。年明け直後に原油や穀物の相場が反発する場面もあったが、今年は次第に需給バランスと価格のぶれが修正されていく形になりそうだ。弱気に傾きすぎた商品市場は、牛歩かもしれないが悲観論が薄れる形で上昇に向かう可能性を捨ててはいけないだろう。

2012年5月17日木曜日

オバマ政権下で魚は値上がり?

米国で20日、オバマ大統領が就任した。未曽有の経済危機の克服に向けて、世界中の期待を一身に集めての登場となった。水産物市場では、同大統領の就任は、長期的には魚価の上昇要因になるといった見方も出ている。

昨年12月、オバマ氏は米海洋大気局(NOAA)の局長に環境科学者でオレゴン州立大学のジェーン・ルブチェンコ教授を指名した。漁業などを管轄する米海洋漁業局(NMFS)もNOAAに属する。
ルブチェンコ氏は海洋生物学などを専攻し、温暖化防止に熱心とされる。漁業資源の保護に対しても積極的な姿勢を見せているという。こうした人選からも、オバマ政権がブッシュ前政権に比べて産業重視から環境重視の姿勢に傾くとの見方が支配的だ。

もともと民主党政権は共和党政権より環境政策が重視される傾向が強い。水産物関係でも影響が指摘される。一例として、ベーリング海が主漁場で、すり身や切り身になる米国産スケソウダラの漁獲枠が挙げられる。漁獲枠制度が導入された後の平均数量は共和党政権で緩和し、民主党政権では厳格化するという数値データが出ている。

もちろん、漁獲枠は科学者委員会の勧告に基づいて決定され、政府が恣意(しい)的に左右するのは難しい。しかし一定の影響があると指摘する関係者は少なくない。「来年の漁獲枠は大幅に増加すると現時点でいわれているが、今年末の結果がどうなるのか情勢をじっくり見守りたい」(全国蒲鉾水産加工業協同組合連合会)との声も上がる。

オバマ大統領の就任で、環境団体や自然保護団体などの運動は活気づいているという。「以前から反対運動の強いクジラやマグロに加えて、最近強まっているスケソウなどの一般魚種についても攻勢がかかるのでは」(大手水産会社)とされる。

資源保護の動きは環境団体などに限らない。ロイター通信によると、ジェームズ・グリーンウッド元議員ら、環境・経済の専門家や科学者からなるワーキング・グループは昨年11月、水産資源の乱獲防止に向けて、オバマ政権が取るべき方向性などを示した報告書を発表した。その中で、オバマ大統領は連邦漁業管理計画を2012年までに評価し、乱獲を防ぐ公正な漁業管理制度の適用を大幅に拡大すべきといった提案をしているという。

経済危機で世界の魚食拡大は一時的に頭打ちになっている。しかし人口増加や健康志向の高まりを受けて、再び増加に転じるのは間違いない。漁業が資源の持続性や環境を重視する姿勢に転換しなければ、必要最低限の水産物すら供給できなくなることは多くの専門化が指摘している。

大手水産卸会社の幹部は「資源管理の流れは変えようがない。オバマ政権ではその流れが加速する可能性が高い。長期的には魚価の上昇要因になるだろう」と指摘している。

2012年5月9日水曜日

自動車コスト節約に効果、カーシェアリング快走

特に不満や不都合なく、自動車にかかる経費が大きく削減できた。自動車を複数の会員で共同利用するカーシェアリングの利用が広がり始めた。交通エコロジー・モビリティ財団が1月に実施した調査によると、国内のカーシェアの車両数は563台で前年同期比10%増、会員数は6396人で同97%増えた。これまで多かったマンション住人同士のカーシェアなど生活者に加えて、自動車がビジネスに必要な事業者からも注目を集めている。

カーシェアは、会員制の短時間レンタカー。携帯電話やインターネット経由で予約した上で、自宅やオフィスに近いステーション(貸し渡し場所)から乗り込む。レンタカーのような店頭での手続きも不要で、車両が空いていれば24時間利用できる。カーシェア各社のサービスは最短30分から利用でき、15分単位で課金される仕組みが多い。

料金体系は契約時の登録料、毎月の基本料、走行距離と利用時間に応じた従量制料金の組み合わせが一般的。大手のオリックス自動車が提示する法人向け料金の一例だと、会員登録50人で小型車を利用する場合、初期費用が8万3800円、月額基本料が3980円。これに、従量料金として15分当たり310円、走行1キロメートル当たり15円が加算される。

マツダレンタカーの場合、入会時に会員1人当たり2100円、月額基本料が1050円、15分ごとの利用料が315円など複数の体系がある。同社の試算では、駐車場代が月2万円の場合、利用時間が月66時間以内なら、自家用車の所有に比べて経費が節約できる計算になる。カーシェアが適するのは、乗車1回当たりの利用が数時間以内と短く、時間帯が一定しない場合。オリックス自動車のサービスを導入した名古屋の住宅販売会社は、1人当たり車両経費が年間77万円から36万円に減った。

カーシェアが経費節約につながるのは、車両購入費用、駐車場代、ガソリン代、税金・保険料などのコストを複数の利用者で分担するため。今のところカーシェア事業各社は全国一律の料金体系だが、実は、駐車場代が利用者のコスト削減効果に大きく影響する。

ガソリン代、税金、保険料、車両購入費は、全国どこでも大きな違いはないが、ステーションとなる駐車場の月間賃料は、東京都心と地方都市、ビジネス街と住宅街など、立地によって大きく違ってくるからだ。料金体系が全国一律なら、固定費である駐車場代が高い地域では、利用者のコスト削減効果が大きいが、逆に事業者の損益分岐点は上昇する。

三井物産の全額出資子会社で、1月22日から東京・渋谷区内でサービスを始めたカーシェアリング・ジャパン(東京・渋谷)の鈴木大山副社長は「ごく近い将来、カーシェアはコンビニのように一般的になる」と予想する。ただ、コンビニとの違いは、まだ、ステーション適地が明確になっていない点だ。

駅のそばであれば、電車を降りてすぐにカーシェアを利用でき利便性は高いが、駐車場の賃貸料も高額で利用料金が割高になりかねない。駅から遠くても居住者の密度が高ければ、採算性の高いステーションが実現する可能性もある。

今後、サービス提供地域が拡大するにつれて、事業者の間でステーション適地の奪い合いになるのは間違いない。「自動車を使う」というサービス自体には品質に大きな差がないので、価格競争力は重要。そのとき、駐車場代をどのように利用料金に反映させるかが、各社の料金設定のポイントになりそうだ。

2012年4月25日水曜日

チタン値下がり濃厚に 景気後退で需要急ブレーキ

レアメタル(希少金属)の一種で航空機のエンジンや特殊鋼、化学プラントなどに使われるチタンの値下がりが濃厚になってきた。世界的な景気後退の影響を受け、需要の伸びに急ブレーキがかかっているためだ。これまで4年連続で値上がりが続いていたが、今年は輸出、国内価格とも値下がりに転じるのはほぼ間違いなさそうだ。

チタンは鉄より4割軽く強度は2倍。燃料が節約できるため航空機向けが需要の半分を占める。耐熱性、耐食性にも優れているため海水淡水化プラントや橋梁(きょうりょう)、原子力発電所、熱交換器などの大型物件にも採用されることが多い。身近なところではゴルフクラブのヘッドやバイクのマフラー、リングやネックレスなどのアクセサリーにも使われている。

チタン価格の指標となるのは中間原料のスポンジチタン。大阪チタニウムテクノロジーズと東邦チタニウムの国内2社で世界の3割を供給する。2009年の輸出価格は、東邦チタニウムが平均して前年比15%の値下げで決着。大阪チタニウムは「まだ固まっていない」としているものの、東邦チタニウムとほぼ同値圏で決着する見込み。国内需要家向けは3月にも決まるが、輸出価格にスライドして値下げとなる可能性が高い。

金融危機に端を発した世界的な景気後退の影響で、昨年後半から需要が急減している。航空機では米大手ボーイングの2008年の航空機受注数が、前年比約53%減の662機に急減。主要労働組合によるストライキも影響し、08年の引き渡し機数も前年比約15%減の375機にとどまった。中国や、オイルマネーに沸いた中東でもプラント発注の遅延やキャンセルが目立つ。チタン展伸材メーカーも在庫調整に動いており、これまで旺盛だった需要環境は一変している。日本チタン協会のまとめによると、08年の国内スポンジチタン出荷量は前年比年比0.8%増の3万8826トン。5年連続で最高を更新したものの、年初見通しの3万9000トンを下回った。

米同時テロにIT(情報技術)バブル崩壊が重なり、急激に世界景気が減速した2001年にも重なるが、当時はまだチタン需要は右肩上がりで、翌02年の輸出価格も圧縮されたとはいえ値上げで決着した。東邦チタニウムは能力比で15%の減産に入るなど縮小する需要への対応に追われている。チタンにも「冬の時代」がやってきたと言えそうだ。

2012年4月18日水曜日

カセイソーダ、不況下でも値上がり観測

世界同時不況で需要が縮小するなか、品不足から値上がり観測が広がる産業資材がある。代表は工業薬品のカセイソーダ(水酸化ナトリウム)と硫酸だ。生産活動に必要で鉄鋼から製紙まであらゆる業界で使われる。

ソーダは昨年2度値上がりして1トンあたり6万6500円(中心値)と1985年以来の高値で取引されている。硫酸も昨年に1割上昇して最近の価格は同2万1100円(中心値)と最高値だ。工業薬品メーカーは昨年に需給逼迫(ひっぱく)を理由に値上げした。

不足観測の背景にはソーダと硫酸が副産物だという点がある。塩化ビニール樹脂に使う塩素の生産でソーダは産出される。硫酸は銅など非鉄製錬の際に出てくる。不景気で塩素や非鉄の需要が減りメーカーは大幅減産に取り組んでいる。同時に副産物の生産も落ち込む。
品薄の度合いは在庫に表れている。ソーダの昨年12月末の国内メーカー在庫は13万5000トン強で輸出分(4万トン程度)を差し引くと適正水準(10万トン強)を下回る。「安定供給に苦慮している」とメーカーの営業担当者は話す。

硫酸は31万5000トン強と適正水準(25万―30万トン)を上回る。ただ、大幅減産は1月から始まったため「在庫が急減するのはこれから」(大手硫酸メーカー)とみられる。

「不況のあおりで工業薬品の内需も減少しているため、需給は均衡するのでは」との見方もある。ただ、ともに輸出需要が旺盛なことから総需要は大幅に減ることはなさそうだ。

ソーダは国内生産のうち15%程度をオーストラリアのアルミナメーカー向けに製錬向けなどに輸出する。「豪州勢の購買意欲は衰えていない」(大手ソーダメーカー)。硫酸は生産量のうち3割近くを中国の肥料向けなどに出荷する。景気動向とは関連が薄く輸出需要は落ち込みにくい。

すでに高値にあるためメーカーは昨年に続く再値上げを否定する。ただ、メーカー各社は業績悪化に直面しており、工業薬品の値上げで業績を下支えしたいところだ。輸出価格が国内価格を上回り、在庫減少で逼迫感が強まれば、値上げの模索に動くだろう。不景気のなかで値上がりが現実味を帯びてきた。

2012年4月10日火曜日

茨城にカンブリア紀の地層…日本最古、5億年前。

茨城県常陸太田市長谷町の茂宮川最上流部の地層「西堂平(にしどうひら)層」が日本最古となる約5億1100万年前のカンブリア紀のものであることが、日立市郷土博物館特別専門員で茨城大名誉教授の田切(たぎり)美智雄さん(65)の研究チームの調査でわかった。

田切さんは「日本列島の形成過程を知るため重要なデータになる」と話している。今回の研究成果は、9月18日から富山大で開かれる日本地質学会で発表される。

研究チームは2008年にも、日立市北部の山地で日本最古となる約5億600万年前の地層を発見しており、今回はさらに500万年さかのぼる地層を確認したことになる。

田切さんらは約10年前から西堂平層の研究を始め、年代測定に必要な鉱物「ジルコン」の採取を続けてきた。昨年7月、南極・北極域について研究している国立極地研究所(東京都立川市)の高感度質量分析計でジルコンの中のウランと鉛の含有率を調べ、年代を割り出した。その結果、カンブリア紀(約5億4200万~約4億8800万年前)のものと判明した。

調査ではこのほか、日立市東河内町で約5億700万年前の地層なども見つかり、カンブリア紀の地層が約30平方キロ・メートルに広がっていることも判明。田切さんは「日立市と常陸太田市にまたがる多賀山地から日本列島が形成されたのではないか」と推測している。

田切さんらは今後、西堂平層から化石を探し、日本列島と大陸のつながりについて調査を進め、生物の進化の過程を明らかにする研究に役立てる。

2012年4月5日木曜日

シカゴ大豆、高止まり 食用油、再びコスト高も

食用油や飼料になる大豆の国際価格が高止まりしている。指標となるシカゴ商品取引所の期近物は1ブッシェルあたり8.8ドル前後で推移。アルゼンチンの不作見通しと、中国の買い増しが強材料だ。食用油メーカーなどは再びコスト高に陥る事態におびえている。

 シカゴ市場では昨年7月、投機マネーが買い支えて過去最高値16.63ドルまで上昇した。だが、米国の金融危機を発端に投機資金は流出、12月にいったん7ドル台まで下がった。
大豆も原油など他の商品と同じように低迷すると市場関係者に予想させた。しかし、実際は底堅さが目立った。

その要因のひとつはアルゼンチン。世界有数の大豆産地で輸出量も多い同国では、今年は数十年ぶりの干ばつと見込まれているという。乾燥した天候が続き、開花などの時期に悪影響を与えた。アルゼンチンの不作は、米国の大豆に対する需要拡大につながっていく。

もう一つは中国の動きだ。中国政府は急落する大豆相場に配慮して、大豆の国家備蓄を始めた。その結果、米国産の流入が増えたというわけだ。アルゼンチン産の調達を不安視し、中国政府が米国産の買い付けを増やした背景もあるとみられている。

世界景気の悪化が日々伝えられる中で、大豆相場の底堅さに食用油メーカーは戸惑っている。少なくとも過去の経験からすれば、現在の価格は妥当な水準ではない。
価格の基調を左右する米国の大豆在庫率見通しは今年8月末で7.6%。この水準に近かった2001一02年の価格は4―6ドルの範囲だった。

価格水準は完全に切り上がり、景気回復とともにさらに長期的な上昇トレンドに戻っていくのではないか――。市場関係者にはそんな不安が渦巻いている。