2015年5月12日火曜日

手持ちの人脈をフルに活用する

彼らが日本に赴任する幾つかの理由として、「日本の機能を中国などに移すための調査をしに来る」「日本のポテンシャルに見切りをつけ投資の回収を最大限に行なおうとしている」「本社の誰もが難しいと考えている日本法人の建て直しを目論んでいる」「日本に家族や関係の深い友人がいる」などが挙げられる。日本支社を縮小するた・めの調査を目的とした赴任ならばどうしようもないが、日本支社を拡大しようとしているならば、手を組む余地は大いにある。また日本人の配偶者や恋人がいる場合は、損得抜きで日本で働くことを考えている可能性もある。

日本の事業を再成長させようと考え、現在ではあまり人気のない日本を自ら希望して赴任してきた外国人上司は、使いようによっては、あなた自身のキャリアも向上させてくれる。どうせ上司とは、文字通り同じ舟に乗っている訳だから、「死なばもろとも」と忠誠心を発揮して、彼らの目論見に協力するのも悪い選択肢ではない。日産自動車の再生も、そうした外国人ヒ司に協力した日本人スタッフの力によって成功したのではないかと私は考えている。特別任務を帯びている外国人上司との接し方。最後に、「特別任務を帯びている」外国人上司については、どうだろうか。

隠れた意図やミッションが上司にあるときに注意すべきは、その赴任期間である。赴任期間が当初から一年それ未満と予想される場合、その特別任務は調査に留まる可能性が高い。しかし任期不定、または長期化が予測される場合、日本法人の抜本的改革や大幅な縮小(逆に拡大する場合もある)、閉鎖や売却、あるいは日本企業やライバル外資の買収といった荒業のための赴任かもしれない。その特別任務が日本で働く社員にとって好ましいものかどうかは内容による。いずれの場合も、大切なのはその任務の概要をできるだけ早く正確に知ることだ。本人から聞くことができればそれに越したことはないが、任務が重要であればあるほど、現地の社員には知らされないと思ったほうがよい。ならばどうするか。

一番簡単なやり方は、赴任してきた外国人トップに親しい日本法人スタッフ(外国人の場合も日本人の場合もあるだろう)から聞き出すことだ。それが難しければ、本社で親しくしている幹部(こちらも外国人と日本人の両方の可能性がある)に尋ねることである。これがうまく行かない場合は、赴任した外国人トップの行動をフォローして、推論を組み立てるはかない。彼(彼女)が不在がちであれば、社外で特別任務の打ち合わせをしている可能性が高い。社内で行なわないのは、日本法人や支店の社員に秘密にしておきたいことがあるということだ。その秘密が、日本切り捨てか、あるいは拡大か。予測するのは意外と難しい。

以前ならばリストラである可能性が高かったが、日本でもM&Aが認知された今日では、日本企業を買収して、日本でのオペレーションを大幅に拡大するという可能性もある。その特命チームにあなたが入ることができれば、内容について詮索する必要はなくなる。だが、そうでない場合、手持ちの人脈をフルに活用して、社内のライバルよりもできるだけ早く、正確に実態をつかまなければならない。そうした、迅速な対応がその後の転職活動を含めて、行動の選択肢を増やすことになるのだ。