2012年6月15日金曜日

過去最大に迫る日経商品指数の下落率

主要商品の取引価格で構成する日経商品指数(1970年平均=100)が急落している。国内景気と相関性の高い前年比騰落率は17種の昨年末値がマイナス25.1%と、アジア通貨危機に国内金融危機が追い打ちをかけた98―99年時の下落率も超えた。今後、鋼材などの値下がりは指数下落を加速する可能性がある。第1次石油危機後に記録した過去最大の下落率(29.4%)さえ上回りそうな気配だ。

月末値ベースで見た17種の前年同月比騰落率は2002年の景気拡大からプラス(前年より上昇)を維持。軽い後退局面入りとの観測さえ出た2回目の「踊り場」でも05年5月のプラス1.3%で踏みとどまった。しかし今回は米リーマン・ブラザースの経営破綻をきっかけに金融危機が実体経済に波及。8月末のプラス21.5%から急落が止まらず、10月末値で42種とともにマイナス(前年より下落)に転じた。

日経商品指数から景気動向を読む場合に水準は関係なく、勢い(騰落率)の変化を見る。内閣府が景気動向指数の先行指標に採用している42種も騰落率の変化で改善、悪化を判断する。17種の過去の推移を見るとアジア通貨危機に山一証券や北海道拓殖銀行の経営破綻が重なり、97年10月から99年いっぱい続いたマイナス局面で、下落率は99年1月に16.8%、42種も13.5%に達している。ただマイナス幅が縮小しても景況感は改善するため、この時は99年1月が底になり、IT(情報技術)バブル崩壊前の2000年1―2月には17種も水面上に顔を出した。

ところが今回の下降局面でまだ底は見えない。17種の昨年末値の前年同期比下落率(25.4%)は、プラザ合意後の円高不況に原油価格が1バレル10ドル以下に急落した局面の86年7月末値(マイナス27.6%)に迫る。第2次石油危機後の下落はピークの81年2月でもマイナス20.5%とそれほど深くなく、86年水準を超えると第1次石油危機の反動で急落した74年12月末値のマイナス29.4%が視野に入る。プラス20%を超す高水準からわずか4カ月でマイナス20%超へという変化の大きさといい、米国の住宅・証券化バブルの崩壊が招いた実体経済への影響が既に驚異的な大きさであることが日経商品指数の動きでも分かる。

昨年は原油価格が1月に初めて1バレル100ドルを突破してから7月の147ドル台まで急騰を続け、17種も7月の185台まで上昇した。原油や穀物価格が現状で下げ止まったとしても、日経商品指数は昨年前半との比較で夏まで下落率の拡大が続く公算が大きい。しかも自動車や家電向けの需要減少とアジア、中東の大型設備稼働が重なる石油化学製品や、これまでの原料高で高止まりしていた鋼板が鉄鉱石の値下がりとともに今後下落する可能性は高い。

主要商品の値下がりは消費者物価の落ち着きや企業コストの軽減につながる半面、景気変化を半年ほど先読みする商品市況のベクトルは下落率が縮小するまで上向かない。日本経済は7―9月期までマイナス成長が続くと予想する三菱UFJ証券の水野和夫チーフエコノミストは「02年から輸出依存度を高めてしまった結果、海外変調に伴う量の減少と円高のダブルパンチが厳しい」と指摘する。個別商品ごとの振れはあったとしても、やはり商品価格は指数でならして見れば景気や経済構造の変化を如実に物語る。

2012年6月13日水曜日

仮釈放者を支援、北九州に初の国営施設。

刑務所から仮釈放された人の社会復帰を支援する初の国営入所施設「自立更生促進センター」が29日、北九州市に開所した。民間の更生保護施設で受け入れが追いつかない現状を打開する狙いがあるが、地元には入所者の再犯を懸念する声も残る。
各地の国営施設の建設計画も反対に遭っている中でのスタートとなり、乗り越えるべき課題は多い。

◆14人入所可能

運送会社の倉庫が並ぶ同市小倉北区の湾岸地域。センターは国の合同庁舎を改装し、14人が滞在できる居室や食堂などを整備した。来月以降に入所する仮釈放者は3か月をめどに、ここを拠点に就職活動を行うほか、社会生活を営むうえで必要なルールや知識について、常駐する保護観察官から指導を受ける。

この日の開所式には、地元の自治会長や保護司ら約40人が出席した。
当初、仮釈放者を受け入れる国営の入所施設は、福岡、京都、福島の3市で開設が予定されていたが、いずれも住民の反対で難航。住宅密集地でないこの場所が選ばれた。「罪を犯した人がやり直すことは大切。国がきちんと監督するなら、あってもいい施設じゃないか」。センターの近くに住む男性(68)は理解を示す。
しかし、周辺にある企業や社宅の住民には不安の声も。法務省はセンターの周りに防犯灯を増設したり、警察にパトロールの強化を要請したりしているが、近所の女性会社員(34)は「再犯がない保証はなく、入所者が子供と接触しないかどうか心配」と話す。今年4月、同省には開所に反対する1万4300人分の署名が提出された。

◆再犯率

仮釈放者は残りの刑期を保護司や保護観察官の定期的な指導を受けながら過ごす。釈放後5年以内に再び犯罪を起こして刑務所に逆戻りする人の割合は、刑期満了まで服役する満期釈放者の59%に対し、仮釈放者は36%にとどまっている。
仮釈放が認められるのは、身元引受先があることが条件となっており、従来、引受先が見つからない人の受け入れは、民間の更生保護施設が担ってきた。だが、全国102か所の民間施設だけでは収容しきれないうえ、更生の意欲があっても性犯罪や薬物犯罪などを犯した人については、近隣住民の抵抗感が強いという現状があった。民間施設では対応が難しい仮釈放者も対象に含めた受け皿作りが、国の急務となっていた。

◆行動把握

初の国営施設に対する民間施設の期待は大きく、埼玉県にある更生保護施設「清心寮」の藤本信次施設長(75)は、「民間施設では住民を不安にさせないために、軽微な罪の人を中心に受け入れてきた」と語り、「国は専門的対応が必要な人の更生に力を入れてほしい」と望む。
センターでは、暴力の衝動を自分で抑えるプログラムなど個々の問題に応じたメニューを準備し、入所者にはGPS(全地球測位システム)付きの携帯電話を持たせて、行動を把握する。ただ、同省幹部は「軌道に乗るまでは性犯罪などを犯した人の受け入れは控える」としており、国営施設の役割を十分果たせるかどうか、課題も残っている。