2016年2月6日土曜日

金に対する投機は何度もドルの弱体化を反映して勃発した

金に対する投機は何度もドルの弱体化を反映して勃発したし、マルク買いのたび重なる大波は巨大なものであった。また、昭和四六年八月のニクソンーシ’ツタ後の東京市場での円切上げをみこんだドル売り・円買い圧力も二週間で三七億ドルの日本銀行の介入買いと、まるで怒濤のような激しさであった。しかし、ひとたびそれらの通貨投機は、投機筋が満足すればひとりでに鎮静化した。

もちろん、これらの国際通貨危機のトンネルを通りぬけるごとに、ドルの価値は低下はしていったのであるが、世界のどこにでもエネルギー危機・戦乱・政治的混乱などが生起するたびに、人々はドルを買い、米国を信頼し、アメリカ大統領の決断に、いわず語らず頼っているのである。

米国の世界一強力な軍事力、やせてもかれてもなおかつ世界最大の国民所得、豊富な国内資源、自由な政治体制、これらのいわゆるアメリカの力に世界中の人々は深く信頼をおいているのである。

もちろん、たとえばマルクは対ドル四対一から、現在のI・六~一・七対一までの上昇となったし、円はIドル三六〇円から一三七円までの値上り(つまり、ドルの減価)を示しているといってみたところで、現実に起きている事態はどういうことか。

第二次大戦後の圧倒的な経済力・軍事力・自己完結的資源賦与を背景に、世界政治を指導し、ドルは依然として世界の隅々にまで浸透し、世界中の国際的価格表示機能はすべてドルに基準をおいている事実を、世界は少なくとも自由世界のあらゆる人々は直視しなければなるまい。