2015年7月7日火曜日

ペスト菌は肺で活発に増殖

ヒトが保菌ノミに刺されてペスト菌が感染すると、腺ペストという病型のペストになる。この場合、肺にも病巣ができ、ペスト菌は気道の分泌物と一緒に排出される。この分泌物を介してほかのヒトの肺に感染が生じると、今度はペスト菌は肺で活発に増殖するようになり、多量のペスト菌を分泌物と一緒に排出するようになる。この病型は肺ペストといわれ、ヒトの間での大流行は呼吸器伝染病の形を取る。しかしペスト菌が、ヒトの間に安定した感染環をつくれないのは、この菌が肺に常在菌として定着できる条件が欠けているからではないだろうか。コレラはガンジス河三角州とバングラデシュの地域に、地方病として持続的に存在しているものである。しばしば全世界的に大流行を起こす。大流行を起こした場合には成人も発病するが、地方病としてのコレラはもっぱら子供の病気である。

これは、免疫現象がコレラにもあることを明確に示している。ふだんコレラが流行していない地域では、成人してもコレラ菌の感染が成立してしまうが、いつも流行している地域では子供のころにすでに感染し、免疫を獲得していると考えられる。また地方病として持続的に存在しているということは、そこでコレラ菌の感染環が保持されているということになる。その条件として、どのようなものが考えられるだろうか。コレラ菌は海洋性細菌であり、自然界ではヒトだけが宿主になるようである。コレラが典型的な消化器伝染病であることも考慮する必要がある。