2015年4月7日火曜日

種痘の対象となったウイルス病

痘庸はジェンナーによる種痘の対象となったウイルス病で、アバタという皮膚の後遺症を遺す。そのために皮膚から皮膚への感染が感染環を維持しているように考えられるが、この病気は実際には呼吸器感染症である。ウイルスは呼吸器から感染した後、血液の中に入り、皮膚も含めて全身に分布してさらに増殖する。皮膚の病巣にもウイルスは存在するから、それは感染源になりうる。種痘法の前の予防法に、人痘法というものがあった。

人痘法の術式のひとつは、患者の皮膚の病巣由来のウイルスをほかのヒトの皮膚に接種するものだった。この場合、皮膚に接種されたウイルスが全身に分布して、痘愉になってしまうこともあったのではないかと考えられる。痘愉は、世界的に撲滅宣言が出された伝染病である。このことは、痘愉という病気がどれほど人類を苦しめてきたものであるかを示すとともに、感染環を断ち切ることが比較的容易であったことも示している。その理由の一つは、種痘法の普及や隔離の徹底が効果を発揮したことの他に、痘愉ウイルスでは、ヒトだけが本来の宿主であるからだろう。

この菌もまた海洋性細菌なので、牛の魚介類を食べる習慣のある日本に、腸炎ビブリオによる食中毒が多いことは理解できる。同し細菌性食中毒でも、欧米ではサルモネラ菌によるものが多いことも、食習慣の特徴から説明できる。肉や鶏卵が、サルモネラ前によって汚染されている場合があるからである。腸炎ビブリオが起こす症状は激しい下痢である。これは、やはりある毒素によって生じることが分かっている。では、この毒素が人の腸管に悪い作用をもっているのは偶然なのだろうか。腸炎ビブリオは海洋性だが、海産の魚介類を本来の宿主とする細菌なのだろか。

もしかしたらこの毒素が、そのような宿拉にある種の病原作用をもっているのかもしれない。しかしいずれにしても、このビブリオはコレラ菌とちかってヒトの問に感染環を形成することはない。あまり聞き慣れない名前をもった細菌が胃粘膜に寄生している。一般に、胃は細菌の生息に適した所とは言えない。しかしこの細菌は胃液の酸度を中和できるために、胃に住めるようである。これは極限環境微生物の一種と言える。この菌が胃潰瘍の原囚になっていると言われているが、感染環はどのようなものだろうか。