2015年11月7日土曜日

軽催眠段階の催眠

催眠療法というものは、深い催眠状態がえられなければ効果がない、と思われてきた。しかし、催眠に深くかかるかどうかは、ひとつは治療面接にのぞむ患者の態度により、また個人差にもよる。大切なことは、治療をもとめてきた人が、どの程度の深さの催眠状態になるかに応じて、それによく合った方法を用いることである。浅い段階でも、治療のすすめ方によって、十分効果があるものである、催眠の深さは、現在いろいろな研究者によって、さまざまなスケールが考案されている。では、類催眠段階、軽催眠について説明しよう。類催眠状態では、覚醒暗示が用いられる。ドイツの精神医学者、J・H・シュルツの自律訓練法やアメリカの心理学者、E・ジェイコブソンの漸進的弛緩法のような自己催眠の技法などがこの段階でよく用いられる。また半睡幻想法といって、目を閉じさせ、ゆったりした状態で頭に浮かぶイメージをつぎつぎに述べさせる方法もある。

軽催眠段階の催眠がえられると、症状除去法などが効果的である。夜尿癖の子供などは、この状態の催眠暗示で、夜ねるとき、おしっこが出たくなると、その感じがはっきりわかり、深く眠っていてもパッと目がさめる条件づけをしておき、手洗いに行って、またねどこへもどり、ゆっくり眠れるというイメージを浮かべさせる方法で、数回面接を行なうと夜尿が消失する。また、観念運動を利用して、たとえば手にもったふりこが、質問に対してイエスならば動く、ノーなら動かないと暗示しておき、問いをすすめて心の悩みの原因をさぐり出す方法も利用できる。描画法といって、絵を書かせる方法も、心の奥の願望をあらわにするのによい。