2012年5月9日水曜日

自動車コスト節約に効果、カーシェアリング快走

特に不満や不都合なく、自動車にかかる経費が大きく削減できた。自動車を複数の会員で共同利用するカーシェアリングの利用が広がり始めた。交通エコロジー・モビリティ財団が1月に実施した調査によると、国内のカーシェアの車両数は563台で前年同期比10%増、会員数は6396人で同97%増えた。これまで多かったマンション住人同士のカーシェアなど生活者に加えて、自動車がビジネスに必要な事業者からも注目を集めている。

カーシェアは、会員制の短時間レンタカー。携帯電話やインターネット経由で予約した上で、自宅やオフィスに近いステーション(貸し渡し場所)から乗り込む。レンタカーのような店頭での手続きも不要で、車両が空いていれば24時間利用できる。カーシェア各社のサービスは最短30分から利用でき、15分単位で課金される仕組みが多い。

料金体系は契約時の登録料、毎月の基本料、走行距離と利用時間に応じた従量制料金の組み合わせが一般的。大手のオリックス自動車が提示する法人向け料金の一例だと、会員登録50人で小型車を利用する場合、初期費用が8万3800円、月額基本料が3980円。これに、従量料金として15分当たり310円、走行1キロメートル当たり15円が加算される。

マツダレンタカーの場合、入会時に会員1人当たり2100円、月額基本料が1050円、15分ごとの利用料が315円など複数の体系がある。同社の試算では、駐車場代が月2万円の場合、利用時間が月66時間以内なら、自家用車の所有に比べて経費が節約できる計算になる。カーシェアが適するのは、乗車1回当たりの利用が数時間以内と短く、時間帯が一定しない場合。オリックス自動車のサービスを導入した名古屋の住宅販売会社は、1人当たり車両経費が年間77万円から36万円に減った。

カーシェアが経費節約につながるのは、車両購入費用、駐車場代、ガソリン代、税金・保険料などのコストを複数の利用者で分担するため。今のところカーシェア事業各社は全国一律の料金体系だが、実は、駐車場代が利用者のコスト削減効果に大きく影響する。

ガソリン代、税金、保険料、車両購入費は、全国どこでも大きな違いはないが、ステーションとなる駐車場の月間賃料は、東京都心と地方都市、ビジネス街と住宅街など、立地によって大きく違ってくるからだ。料金体系が全国一律なら、固定費である駐車場代が高い地域では、利用者のコスト削減効果が大きいが、逆に事業者の損益分岐点は上昇する。

三井物産の全額出資子会社で、1月22日から東京・渋谷区内でサービスを始めたカーシェアリング・ジャパン(東京・渋谷)の鈴木大山副社長は「ごく近い将来、カーシェアはコンビニのように一般的になる」と予想する。ただ、コンビニとの違いは、まだ、ステーション適地が明確になっていない点だ。

駅のそばであれば、電車を降りてすぐにカーシェアを利用でき利便性は高いが、駐車場の賃貸料も高額で利用料金が割高になりかねない。駅から遠くても居住者の密度が高ければ、採算性の高いステーションが実現する可能性もある。

今後、サービス提供地域が拡大するにつれて、事業者の間でステーション適地の奪い合いになるのは間違いない。「自動車を使う」というサービス自体には品質に大きな差がないので、価格競争力は重要。そのとき、駐車場代をどのように利用料金に反映させるかが、各社の料金設定のポイントになりそうだ。