2012年4月18日水曜日

カセイソーダ、不況下でも値上がり観測

世界同時不況で需要が縮小するなか、品不足から値上がり観測が広がる産業資材がある。代表は工業薬品のカセイソーダ(水酸化ナトリウム)と硫酸だ。生産活動に必要で鉄鋼から製紙まであらゆる業界で使われる。

ソーダは昨年2度値上がりして1トンあたり6万6500円(中心値)と1985年以来の高値で取引されている。硫酸も昨年に1割上昇して最近の価格は同2万1100円(中心値)と最高値だ。工業薬品メーカーは昨年に需給逼迫(ひっぱく)を理由に値上げした。

不足観測の背景にはソーダと硫酸が副産物だという点がある。塩化ビニール樹脂に使う塩素の生産でソーダは産出される。硫酸は銅など非鉄製錬の際に出てくる。不景気で塩素や非鉄の需要が減りメーカーは大幅減産に取り組んでいる。同時に副産物の生産も落ち込む。
品薄の度合いは在庫に表れている。ソーダの昨年12月末の国内メーカー在庫は13万5000トン強で輸出分(4万トン程度)を差し引くと適正水準(10万トン強)を下回る。「安定供給に苦慮している」とメーカーの営業担当者は話す。

硫酸は31万5000トン強と適正水準(25万―30万トン)を上回る。ただ、大幅減産は1月から始まったため「在庫が急減するのはこれから」(大手硫酸メーカー)とみられる。

「不況のあおりで工業薬品の内需も減少しているため、需給は均衡するのでは」との見方もある。ただ、ともに輸出需要が旺盛なことから総需要は大幅に減ることはなさそうだ。

ソーダは国内生産のうち15%程度をオーストラリアのアルミナメーカー向けに製錬向けなどに輸出する。「豪州勢の購買意欲は衰えていない」(大手ソーダメーカー)。硫酸は生産量のうち3割近くを中国の肥料向けなどに出荷する。景気動向とは関連が薄く輸出需要は落ち込みにくい。

すでに高値にあるためメーカーは昨年に続く再値上げを否定する。ただ、メーカー各社は業績悪化に直面しており、工業薬品の値上げで業績を下支えしたいところだ。輸出価格が国内価格を上回り、在庫減少で逼迫感が強まれば、値上げの模索に動くだろう。不景気のなかで値上がりが現実味を帯びてきた。