2012年6月13日水曜日

仮釈放者を支援、北九州に初の国営施設。

刑務所から仮釈放された人の社会復帰を支援する初の国営入所施設「自立更生促進センター」が29日、北九州市に開所した。民間の更生保護施設で受け入れが追いつかない現状を打開する狙いがあるが、地元には入所者の再犯を懸念する声も残る。
各地の国営施設の建設計画も反対に遭っている中でのスタートとなり、乗り越えるべき課題は多い。

◆14人入所可能

運送会社の倉庫が並ぶ同市小倉北区の湾岸地域。センターは国の合同庁舎を改装し、14人が滞在できる居室や食堂などを整備した。来月以降に入所する仮釈放者は3か月をめどに、ここを拠点に就職活動を行うほか、社会生活を営むうえで必要なルールや知識について、常駐する保護観察官から指導を受ける。

この日の開所式には、地元の自治会長や保護司ら約40人が出席した。
当初、仮釈放者を受け入れる国営の入所施設は、福岡、京都、福島の3市で開設が予定されていたが、いずれも住民の反対で難航。住宅密集地でないこの場所が選ばれた。「罪を犯した人がやり直すことは大切。国がきちんと監督するなら、あってもいい施設じゃないか」。センターの近くに住む男性(68)は理解を示す。
しかし、周辺にある企業や社宅の住民には不安の声も。法務省はセンターの周りに防犯灯を増設したり、警察にパトロールの強化を要請したりしているが、近所の女性会社員(34)は「再犯がない保証はなく、入所者が子供と接触しないかどうか心配」と話す。今年4月、同省には開所に反対する1万4300人分の署名が提出された。

◆再犯率

仮釈放者は残りの刑期を保護司や保護観察官の定期的な指導を受けながら過ごす。釈放後5年以内に再び犯罪を起こして刑務所に逆戻りする人の割合は、刑期満了まで服役する満期釈放者の59%に対し、仮釈放者は36%にとどまっている。
仮釈放が認められるのは、身元引受先があることが条件となっており、従来、引受先が見つからない人の受け入れは、民間の更生保護施設が担ってきた。だが、全国102か所の民間施設だけでは収容しきれないうえ、更生の意欲があっても性犯罪や薬物犯罪などを犯した人については、近隣住民の抵抗感が強いという現状があった。民間施設では対応が難しい仮釈放者も対象に含めた受け皿作りが、国の急務となっていた。

◆行動把握

初の国営施設に対する民間施設の期待は大きく、埼玉県にある更生保護施設「清心寮」の藤本信次施設長(75)は、「民間施設では住民を不安にさせないために、軽微な罪の人を中心に受け入れてきた」と語り、「国は専門的対応が必要な人の更生に力を入れてほしい」と望む。
センターでは、暴力の衝動を自分で抑えるプログラムなど個々の問題に応じたメニューを準備し、入所者にはGPS(全地球測位システム)付きの携帯電話を持たせて、行動を把握する。ただ、同省幹部は「軌道に乗るまでは性犯罪などを犯した人の受け入れは控える」としており、国営施設の役割を十分果たせるかどうか、課題も残っている。

2012年5月20日日曜日

弱気に傾きすぎた商品市場

米国発の金融危機が昨秋に世界を駆け巡ってからは、内外の商品市場では値下がりや減産の話ばかりが目立つ。石油輸出国機構(OPEC)の大幅減産をはじめ、素材から自動車やエレクトロニクス関連の最終製品まで軒並み減産ラッシュとなっている。
 
昨年末の米国のクリスマス商戦がすこぶる振るわなかっただけに、日本を代表する輸出産業の販売低迷と業績の下方修正もうなずける。東アジアから米国に向かう外航コンテナ船が運ぶ貨物量はクリスマス商戦を控えた10月ごろが最も多くなる。だが昨年10月の輸送実績は、リーマンショック前で、どちらかといえば閑散期の8月実績より4.5%少ない。

まだ12月までの数字が出ていないが、昨年の月間輸送量のピークが8月だったのはほぼ確実だ。ベテランの海運業界関係者も目を丸くするような珍事となった。

内需型商品に目を向けてみても、セメントは昨年4月に10%の値上げが実現したはずだったが、大手メーカーのなかには販売不振を背景に2009年3月期が7期ぶり最終赤字の見通しもある。まさに未曽有(みぞう)の事態なのだろう。

こうした事例を挙げていくと、今年の内外の商品価格の動向にも悲観的な見方もしてみたくなる。ただ足元の商品価格には実際の需要と供給のバランス以上に下げているものもある。

昨夏の原油相場1バレル147ドルの最高値を付けたころに投資ファンド関係者が「この相場は実際の需給や先行きの需要を反映したもの」と強弁した。これが今なお正しい認識だとみる関係者はほとんどいないだろう。

逆に今の商品価格が需要と供給の現状や先行きなどファンダメンタルズ(基礎的条件)を無視する形で過度に売り込まれているものも多いようにみえる。年明け直後に原油や穀物の相場が反発する場面もあったが、今年は次第に需給バランスと価格のぶれが修正されていく形になりそうだ。弱気に傾きすぎた商品市場は、牛歩かもしれないが悲観論が薄れる形で上昇に向かう可能性を捨ててはいけないだろう。