2014年7月4日金曜日

公益信託の仕組みとその実例

たとえば学校とか図書館、美術館などの設備を持ち、専門の人をおいて管理運営するいわゆる事業執行型の公益活動には公益信託はあまり向かないが、各種の公益活動に助成金、奨励金などを支給する財産給付型のものには適しているということになり、総理府が中心となって公益信託の認可基準を各省庁に示し、これに準拠してその受託が実現することになりました。

もっとも、公益活動を伴う公益信託は、英米では盛んに行われており、アメリカでは信託と法人とが半々ぐらいのようで、イギリスでは信託が普通ともいわれています。シェークスピアの生家を保存している記念館も信託財産といわれますが、将来、わが国にこれに似たものができるのも夢でないかも知れません。

公益信託の仕組みは図7の通りですが、信託の関係人について若干の説明をつけ加えましょう。まず主務官庁ですが、信託目的によって、たとえば厚生省とか文部省とか、あるいは地方自治体などとなります。公益法人と違って公益信託は、これら各省庁のほか、当然ながら大蔵省の監督も受けます。信託運営委員会は公益法人ではいわば理事会や評議員会などに相当するものです。

公益(信託)目的を円滑に遂行するために、たとえばそれが学術奨励のためならば、どういう研究をしているどの人に助成金を交付すべきかなどについて意見を述べ勧告を行う立場です。また信託管理人は、受益者が現在確定できない人であるために設けられているもので、将来の受益者保護のために主として受託者の行う信託財産の収支など重要事項について承認を与えます。つまり、前者は信託目的について、後者は信託財産の管理運用についての役割を担っているわけです。

なお、年金信託や財産形成給付金信託なども受益者は信託受託のときに確定していませんが、加入者は会社の従業員の内であることは明らかなのに対し、公益信託は信託目的にふさわしい人ならばそのような制限はないのです。また同じ公益的目的のためでも、初めから受益者を特定している場合は、公益信託とは認められません。すなわち、将来の不特定多数の受益者のための公益目的の信託がその特徴といえましよう。