2012年4月25日水曜日

チタン値下がり濃厚に 景気後退で需要急ブレーキ

レアメタル(希少金属)の一種で航空機のエンジンや特殊鋼、化学プラントなどに使われるチタンの値下がりが濃厚になってきた。世界的な景気後退の影響を受け、需要の伸びに急ブレーキがかかっているためだ。これまで4年連続で値上がりが続いていたが、今年は輸出、国内価格とも値下がりに転じるのはほぼ間違いなさそうだ。

チタンは鉄より4割軽く強度は2倍。燃料が節約できるため航空機向けが需要の半分を占める。耐熱性、耐食性にも優れているため海水淡水化プラントや橋梁(きょうりょう)、原子力発電所、熱交換器などの大型物件にも採用されることが多い。身近なところではゴルフクラブのヘッドやバイクのマフラー、リングやネックレスなどのアクセサリーにも使われている。

チタン価格の指標となるのは中間原料のスポンジチタン。大阪チタニウムテクノロジーズと東邦チタニウムの国内2社で世界の3割を供給する。2009年の輸出価格は、東邦チタニウムが平均して前年比15%の値下げで決着。大阪チタニウムは「まだ固まっていない」としているものの、東邦チタニウムとほぼ同値圏で決着する見込み。国内需要家向けは3月にも決まるが、輸出価格にスライドして値下げとなる可能性が高い。

金融危機に端を発した世界的な景気後退の影響で、昨年後半から需要が急減している。航空機では米大手ボーイングの2008年の航空機受注数が、前年比約53%減の662機に急減。主要労働組合によるストライキも影響し、08年の引き渡し機数も前年比約15%減の375機にとどまった。中国や、オイルマネーに沸いた中東でもプラント発注の遅延やキャンセルが目立つ。チタン展伸材メーカーも在庫調整に動いており、これまで旺盛だった需要環境は一変している。日本チタン協会のまとめによると、08年の国内スポンジチタン出荷量は前年比年比0.8%増の3万8826トン。5年連続で最高を更新したものの、年初見通しの3万9000トンを下回った。

米同時テロにIT(情報技術)バブル崩壊が重なり、急激に世界景気が減速した2001年にも重なるが、当時はまだチタン需要は右肩上がりで、翌02年の輸出価格も圧縮されたとはいえ値上げで決着した。東邦チタニウムは能力比で15%の減産に入るなど縮小する需要への対応に追われている。チタンにも「冬の時代」がやってきたと言えそうだ。

2012年4月18日水曜日

カセイソーダ、不況下でも値上がり観測

世界同時不況で需要が縮小するなか、品不足から値上がり観測が広がる産業資材がある。代表は工業薬品のカセイソーダ(水酸化ナトリウム)と硫酸だ。生産活動に必要で鉄鋼から製紙まであらゆる業界で使われる。

ソーダは昨年2度値上がりして1トンあたり6万6500円(中心値)と1985年以来の高値で取引されている。硫酸も昨年に1割上昇して最近の価格は同2万1100円(中心値)と最高値だ。工業薬品メーカーは昨年に需給逼迫(ひっぱく)を理由に値上げした。

不足観測の背景にはソーダと硫酸が副産物だという点がある。塩化ビニール樹脂に使う塩素の生産でソーダは産出される。硫酸は銅など非鉄製錬の際に出てくる。不景気で塩素や非鉄の需要が減りメーカーは大幅減産に取り組んでいる。同時に副産物の生産も落ち込む。
品薄の度合いは在庫に表れている。ソーダの昨年12月末の国内メーカー在庫は13万5000トン強で輸出分(4万トン程度)を差し引くと適正水準(10万トン強)を下回る。「安定供給に苦慮している」とメーカーの営業担当者は話す。

硫酸は31万5000トン強と適正水準(25万―30万トン)を上回る。ただ、大幅減産は1月から始まったため「在庫が急減するのはこれから」(大手硫酸メーカー)とみられる。

「不況のあおりで工業薬品の内需も減少しているため、需給は均衡するのでは」との見方もある。ただ、ともに輸出需要が旺盛なことから総需要は大幅に減ることはなさそうだ。

ソーダは国内生産のうち15%程度をオーストラリアのアルミナメーカー向けに製錬向けなどに輸出する。「豪州勢の購買意欲は衰えていない」(大手ソーダメーカー)。硫酸は生産量のうち3割近くを中国の肥料向けなどに出荷する。景気動向とは関連が薄く輸出需要は落ち込みにくい。

すでに高値にあるためメーカーは昨年に続く再値上げを否定する。ただ、メーカー各社は業績悪化に直面しており、工業薬品の値上げで業績を下支えしたいところだ。輸出価格が国内価格を上回り、在庫減少で逼迫感が強まれば、値上げの模索に動くだろう。不景気のなかで値上がりが現実味を帯びてきた。