2016年1月9日土曜日

サニーペイルの企業的行革

米国の郡や市町村が独自の政策やプログラムができるのは、自治権がもともと強いという歴史的な事情がある。各州が憲法を持ち、多くの郡や市町村に憲章がある。独自の徴税権があり、消費税は地方税だ。連邦政府から流れてくるカネは地方政府の財源の一五%を占めるにすぎない。

そうした立場を生かして、全国州議会述盟は、ゴア委員会に対して、いまだに残っている細分化された補助金のうち、職業訓練、教育、水質保全、車他産業の民心転換、環境保全、交通安全にかかわる種類の補助金を六つの分野にひとくくりした「柔軟な交付金」にするよう要望を提出した。この要望はゴア委員会の報告に採用された。

もちろん、納税者や有権者の権利意識も強いので、市町村は市民を意識した合理的で効率的な行政を迫られるという事情もあり、行政改革にでは連邦政府より先駆的な役割を果たしてい。

ゴア委員会は、郡や市町村の民間企業のような経営にも着目していた。米国というお国柄が現れている。真っ先に注目したのは、カリフォルニア州の先端技術証業の集積地シリコンーバレーにある人口十二万人のサニトペイル市である。前例を認めず、各課、各部の予算をゼロペースから見直すことから始める。税収をにらみながら、以前からの社内も年度ごとに見直して、各課の仕事の目標を決めてトく。外注を増やしたり、ボランティアの協力を求めるなど人件費の削減にも努める。

たとえば、費用対効果に疑問のある道路計画は削めて、既存の道路の補修に力をいれる。あるいは、道路を延長する際、距離や強度などの目標を定めて、その方法は建設業者に任せた競争入札にかける。

そして工事が予算より安い価格で成立し、かつ質などの目標を達成していれば、差額のなかから職員にはボーナスが出るし、職員査定のポイントも上がるという仕掛けだ。企業のように顧客、市民を優先する。リクリエーション課は、アンケート調査や市民からの手紙などを参考にしながら、カヌー、釣り、キャンプなどのリクリエーションを実施する。

2015年12月7日月曜日

進む中国の国際化

その中国では、ドイツ、フランス、アメリカ、日本の各国のブランドで乗用車を組み立てており、一部の軽四輪バンタイプのタクシーを除けば、乗用車のほとんどは外国製である。ソウルを走る乗用車の大部分が韓国製であるのとは、対照的な風景である。長江上流の雅碧江では、一九九九年末に中国最大の水力発電所三三〇万が完成したが、この設計から施工まで、イタリア、フランス、中国の企業が共同で請け負い、世界銀行からの一〇億八〇〇〇万ドルの融資を受けている。文化大革命中の、何から何まで自力更生でやりぬくという経済・技術戦略とは、なんという変わりようであろう。
 
世界の人口の五分の一を占める中国が、その門戸を開いて急速に国際化しつつある。あらゆる分野の多国籍企業が、中国大陸にも、中国周辺の沿海にも宇宙空間にも続々と進出しつつある。中国の国際化が進むにつれて、海外の動きと連動して、さまざまな利害関係や思想が生じることは避けられない。そのため、広大な中国全土にわたって、北京から十二億の人を政治的に統括するのは、次第に困難となるに違いない。
 
各省・自治区の分権化は、建国後も何度か試みられ、そのつど混乱が生じて中央集権化に戻ることをくりかえしてきたのだが、結局は分権化へと進まざるを得ないのではないか。これも性急に行えば、中国は混乱し、その影響は東アジアから世界にも及ぶであろう。アメリカへの一極集中から多極化への移行と同じく、二一世紀の世界は、中国がいかにして分権体制に軟着陸するかという課題につきあたる。
 
ところで、日本と中国を含めての東アジアの諸国・地域の対米輸出依存度は、ひところより低下したとは言え、依然として高い。それぞれの対米輸出額と総輸出額に対する百分率、さらに対日輸出額・輸入額、主要輸出商品の第一位、第二位を示す。東アジア諸国・地域は、家庭用電子機器やそれらの部品や衣料などの生産と輸出を軸として、経済成長を推進し、それによって域内市場を拡大させつつあり、その点て、世界のなかでも際立った特徴を持っている。また主要輸出品の対米依存度や、主要輸入品の対日依存度がきわめて大きいことでも特徴がある。