2015年9月7日月曜日

インターネットが産業活動に与えるインパクト

直接に消費者を相手とする取引だ。しかし、インターネットが産業活動に与えるインパクトでより重要なものは、企業内の情報システム中企業対企業の取引に対するものであると考えられている。『ヒジネスーウイーク』九九年三月八日号の記事は、バイアグラの申請から認可までにかかった時間は従来の新薬の場合の半分であり、それは、ファイザー社が必要データをウェブサイトに準備したからであった。従来であれば必要だった膨大な書類の準備も、必要なデータを探す手間がなくなったために、審査期間を著しく短縮できたのだそうである。

製造業においてネットワークが活用されるいま一つの重要な場面は、部品メーカーや原材料の調達先などの選定と発注だ。現在すでに、多くのメーカーがインターネットを通じて全世界に情報を流してメーカーを選定する方式を導入し、事業を著しく効率化している。

ジェネラルーエレクトリック(General Electric)は、一九九六年、オンラインの部品調達システムを同社の照明部門のGEライティング(GE Lighting)に導入した。これは、入札依頼を世界中の供給業者にインターネット経由で送り、納入業者がインターネット経由で入札を行なうシステムである。

GEライティング社は全世界に四五の工場を保有し、調達担当者は毎日数百件にのぼる機材等の部品調達希望を受ける。このシステムの導入以前は、担当者は二〇〇万枚以上の図面のなかから必要なものを探し出し、入札候補企業に郵送していたという。そのため、部品調達に必要な資料を発送するだけでも七日間かかり、発注先決定まで三週間以上かかっていたという。

システム導入後、部品供給の候補となる企業は、発注作業開始後二時間以内に調達情報を受け、七日以内に入札することが可能となった。このシステムの導入により、人件費が三〇%削減された。また、調達プロセスの所要日数が、従来の二〇日程度から、一〇日程度になった。さらに多数の供給元による入札により、有利な価格での調達が可能になり、原材料調達コストが五~二〇%削減された。

2015年8月7日金曜日

同期生の家庭環境

私は自分に納得のいく仕事をするために外務省を選択した、という安心感は、その後、外務省に入ってからも、そして、その職業を離れたいまでも、私の精神的安定剤として働いてきた。

仮に外交官選択の動機が華やかさを求める若気にあったとしたら、大学の友人が心配してくれたように、おそらく挫折していたのではないかと思う。外務省という職場で経験した仕事の中身こそが、私のような性格の人間でも、二十五年間も外務省で働くことができた最大の魅力なのである。

本来なら、外交官を網羅してその家庭環境を分類してみることができたら、と思う。しかし、そのようなことをするために必要な資料は持ち合わせていない。ここでは、それに代わるものとして、私の同期生(私を含めて一七人)について若干の点を指摘して、「華やかさ」にまつわる一般的イメージの誤解を解いておこう。

同期生の中で、外交官「二世」「三世」であった者(つまり、父親さらには祖父が外交官だった者)は二人いた。しかし、その他の一五人の家庭環境は、それほど目を見開くようなものではなかったと思う。なかには、私が現在ももっとも個人的に尊敬してやまない者のように、両親が居らず、妹の面倒をみるために学問の世界への道を断念して外務省を選択した人もいたし、高校卒業後いったん就職し、その後、東大に入り直して外務省に入ってくるという猛者もいた。

本人の家庭環境を補うものとして、通俗的な刊行物でよく取り上げられるのが、妻になる人の家庭環境である。しかし、私はこういう方面のことにはまったく関心がない。外務省に入ったときに既に結婚していた同期生も数人いて、研修旅行のとき、その中の一人が髭を剃りながら、「こうして顔を郷める図は、とてもワイフには見せられない」といったことが、妙に記憶に残っている程度である。