2014年11月7日金曜日

どこかしこも問題の先送り

訴えてくるのは氷山の一角ですが、それさえ抑え込めば、その背後にある何百、何千、何万のケースが抑えられることもあります。訴えが殺到するのは異常事態なのだから、なんとか事前に食い止めようということにはとても敏感で、そんなところで裁判官は、「自分が社会の秩序を維持する正義の味方だ」と思っているのかもしれません。

弁護士においても、なるべく違法なことがないように物事を解釈しようとする人がいます。「違法だとしたら、今までやっていたこともすべて違法になるから、それはおかしい」といった本末転倒の思考がときどき出てきます。本当はその考え方こそおかしいのですが、「それが実務というものなのだ」と言わしめているのが、合法的解釈に長けた「裁判実務的思考」にほかなりません。

結局、「問題かおりそうでも、なるべく問題はないに越したことはない」という気持ちがさらにオーバーランして、「問題があっても、ないことにしよう」という方向に走りがちになります。「法律違反があったかどうかは別として」などといって、とにかく事件を処理することだけが目的となり、問題を闇から闇に葬るテクニックやシステムが確立しているわけです。

本当に問題がなければそれでも良いのですが、臭いものに蓋をしているだけで、実際に問題があることには変わりかおりません。単に深刻な現実から目をそらしているだけなのです。それでも、「問題が認識されていなければ問題がないのと同じだよ」という結論だけ聞かされて、むりやり安心させられているのが日本国民のようです。

2014年10月7日火曜日

遺跡で「古代ギリシャ劇」

私自身の体験からは、島々を中心とした観光地全般の町づくりがよいことを挙げたい。島では、どの辺りに景色のよい展望台や見所があるのか、どこを目指して行けばよいのかだいたい決まっている。特に小さい島なら船が着く港町と、修道院や城が頂上に築かれ広場や繁華街が広がる城砦型の町のふたつに見所が集中しているという特徴に手を加えていないのだ。主要ビーチには決まって路線バスが出ている。そのままの町並みを保存することで、観光客は地図やガイドブックを持たずとも、気軽に散策できる。その心地良さは、安心感や満足感につながっていく。

ギリシャ観光の最後の要素は、各々の観光地が見るだけに留まらない魅力作りをしていることだ。まずはギリシャの旅として代表的なスタイルのひとつ、クルーズの例からお話ししていこう。クルーズは地中海に浮かぶ島々のリゾート地を船で巡るもので、様々な種類がある。盛装して優雅にディナーやダンスを楽しむ豪華な客船から、食事の回数や停泊先の島でのツアーの有無がオプション形式になっている気軽なものまで自由に選ぶことができる。日数や船の大きさも好みのものを選べばよい。ギリシャに入国する前からクルーズを予約している人が大半だが、1日クルーズなどであれば、現地に着いてから参加することも可能。

スニオン岬のポセイドン神殿や、エギナ島のアフェア神殿、ディロス島のアポロン神殿などの遺跡群を眺めながら船旅ができるのはギリシヤならではだ。ギリシヤ政府観光局も他では味わえない体験として、クルーズのアピールを続けてきた結果、今や老いも若きも、セレブからバックハッカーまで、参加しやすくなっている。そんな島々を一生の思い出の場所にする企画も人気を呼んでいる。ウェディングだ。青い丸屋根の教会など、まさにギリシヤらしい景観が人気のサントリーニ島では、日本人や中国人カップルの挙式もよく見かける。俳優の石田純一さんが東尾理子さんにプロポーズしたと報じられたミコノス島も挙式やハネムーンに人気だ。

ギリシヤの島が舞台の大ヒットミュージカル「マンマーミーアー」は、メリルーストリープ主演で映画化(2008年)されたことで、撮影が行われたスキアトス島やスコペロス島も、ウェディングやハネムーン人気が急上昇したという。最近、特に中国、韓国人旅行者の間でのウェディング人気が高いのは、テレビでの影響が強いそうだ。後にも触れるが、ギリシヤにはテレビコ了-シャルや映画の舞台として絵になる遺跡などが多い反面、長年、考古学委員会の厳格な規制が障害となって撮影許可をとるのが難しく、敬遠されてきた。しかし近年、文化観光省がハリウッド映画の遺跡撮影に全面的に協力するなど、国をあげてメディアによるアピールを重視したため、積極的に海外メディアのロケも行われるようになり、それが客を呼んでいるわけだ。

この国の夏は雨がほとんど降らず、夜間も月が美しい。8月中句はちょうど日本の十五夜のように月見の習慣がある。毎年8月の満月が輝く週末には、ギリシャ全土の遺跡や博物館が夜間無料開放される。青い月の光に照らし出される遺跡は、昼間とはまた違う幻想的な雰囲気を湛えている。といっても、ただ見せるだけでなく、今ではそれらを利用したイベントが頻繁に行われている。特に6、7、8月は音楽、演劇、現代舞踊、絵画展覧会などさまざまな催しが目白押しのフェスティバルが開催される。